スーパーローカルヒーロー
~3.11のその後。ぼくらの未来はぼくらがつくる~

(好評につき第2版!)

定価: 1,500円+税 
2016年2月8日発売 著者: 田中トシノリ 歌島舎刊 
編集協力: 橋本京子 装丁: 山下リサ 装画・イラスト: 渡辺幸子
版型:タテ18.8×ヨコ12.9cm 頁数:244P 体裁:中綴じ

 

※ご注意
こちらの商品は第2版となります。
2016年2月8日発売の初版とは、カバーイメージと本書の内容が若干異なります。
予めご了承ください。

 

※映画無料視聴キャンペーンは2019年末をもって終了いたしました。ありがとうございました。

 

 

 

読んでから観る? 観てから読む?
映像と音楽、文字という3つのツールを通して、
あなたの五感はどう刺激され、ひらいていくのか。


映画『スーパーローカルヒーロー』監督の田中トシノリが書き下ろした、3.11以降の自身の成長を元にしたエッセイ本。映画では伝えきれなかったこと、上映して見えてきたこと等を綴ったあらたな作品。

映画を観た人も、これから観る人も必読な一冊!



監督の田中トシノリは、見た目はちょっと生意気。
でも中身はナイーブな30代。
そんなトシの感性と創造性を目覚めさせたのが3.11だ。
悩んだりへこんだりしながらも「生きる哲学」を探り続けるトシの成長物語は、
今の時代を「生きにくいな」と感じているすべての人に
「自分の一歩を踏み出す」勇気をくれる。

 

 

 

 

 

 

 

はじめに

 

映画『スーパーローカルヒーロー』に続いて、
なぜ僕が本をつくったのか



 3・11が起きるまで、僕という人間は眠っていたのかもしれません。

  何をやりたいのか、何をすべきなのかが分からず、誰かの真似のような生き方をする20代を過ごしました。自身へのいらだちや周囲からのプレッシャーから逃 げるようにイギリスに留学し、映像の世界に出会い、ようやく自分の進むべき道が見えたような気がしていました。しかしそこには、「何のためにするのか」 「何を表現したいのか」という哲学が欠けていました。心の底から納得できるもの、充足感を得られるものがないままでした。

 そんな矢先の3・11。午後2時46分に東北を襲った大地震は、地球の裏側まで響き渡り、早朝のロンドンにいる僕を目覚めさせたのです。
 それまで僕は、「原発」のことも「放射能」のことも考えたことがありませんでした。海外の仲間たちから日本の政治や歴史について、あるいは自分の出身地である「ヒロシマ」のことをたずねられても、何も答えられませんでした。
  震災を機にロンドンから広島県尾道市に帰り、自分が今なすべきことは何か、真剣に向き合い始めました。そしてある日、ちょっと変わったオジサンと出会いま す。以前の僕なら気にもとめなかったであろう無愛想で要領の悪いそのオジサンは、どこにでもいそうでどこにもいないオジサンでした。
 目の前の問 題に他人事ではなく自分事として取り組み、何の見返りも求めず、ひたすらまっすぐ突き進むオジサン。「ヤボ」な僕はその「粋」な生き方に、いつしか惹きつ けられていました。と同時に、さまざまな問題の本質が、じつは自分のとても身近なところにあることにも気づかされていきました。
 全国上映となった僕のドキュメンタリー映画『スーパーローカルヒーロー』は、そのオジサンの後ろ姿から学んだことを映像で表現したものです。「ヒーローは特別な誰かなんかじゃない。自分自身がそうあるべきなんだ」ということを確信しました。
 本書では、『スーパーローカルヒーロー』が誕生するまでのいきさつと、日本をはじめ海外で上映していくなかで見えてきたこと、91分の映像だけでは伝えきれなかった想いをつづりました。
 映画を観た人たちが寄せてくれた感想から浮かび上がってきたキーワード、

「家族のあり方」
「3・11後の生き方」
「あたらしいヒーロー像」
「これから自分のすべきこと」
「音楽の本来の役割」
 これらをもう一度かみしめて、何かをみなさんに投げ返したくなったのです。


 つたない文章ではありますが、映画とあわせて本書に目を通していただけたら、こんなにうれしいことはありません(映画『スーパーローカルヒーロー』の無料視聴案内が222ページにあります)。
 すでに映画を観てくださった方には今一度「生きる哲学」について考える機会に、映画より本書が先という方には、僕という人間の変化を通して、あらためて3・11を振り返る機会にしていただければ幸いです。

 

 

 

 

 

 

目次


はじめに 5


映画『スーパーローカルヒーロー』とは 16

 


1章 3・11後、ロンドンから尾道へ



 

僕はいったい、何をやりたいのか? 26


3・11ショック! 日本が大変なことになっている 29


東日本の人に避難を呼びかけよう 32


ノブエさんという変なオジサン 34


超アナログなノブエさんにいらだつ 37


避難者支援の活動記録を撮ろう! 40


 

 

 

2章 どこにでもいそうなオジサンは

     どこにもいないオジサンだった

 

「長江のおうち」に通い続ける 46


思考停止を止める日「YOU THINK 3.11」を企画 51


『カンタ!ティモール』で映画の力に目覚める 54


アーサー・ビナードさんの「生命の肯定」に共鳴 57


文学や音楽や芸術なしには世の中は変えられない 62 


「ノブエさん」を探るべく、ミュージシャンたちにインタビュー 68 
 

 

3章 映画が完成するまでの日々



 

「放射能」だけをテーマにした映画は、僕はつくらない 76


人は映像より「音」で映画を観ている 79 


さて。150時間の素材をどうやって編集する? 80


尾道と移住組はクリエイティブな人材の宝庫 82 


スタッフ間で意見が割れる。僕も揺れた 85 


タイトル『スーパーローカルヒーロー』に込めた想い 88 


誰に観てもらいたいかを絞り込む 90 


ノブエさんの感想は「なつかしい」だった 91 

 

 


4章 東京ではなく尾道から発信する
 

世界を勇気づける映画にしたい 98 


大林監督からの使者の言葉に涙する 103 

嬉しい誤算。団塊の世代が動いた 107


自主上映に130人。トットリノキセキ 110


世界の舞台へのパスポートが届く 114

生涯忘れられない6日間。ワルシャワ国際映画祭 119


20代、30代の若者からフクシマへの質問が続出 129


ベルリンから日本へのメッセージ 135

野本ゆうこさん一家と僕の葛藤 140


音楽に関わる人たちからのあたたかい後押し 142


しかし、トーキョーには落とし穴が待っていた 144


宣伝費100万円達成の舞台裏 149 


「渋谷クラブクアトロ」での夢のような一夜 153 

「止まらない人たち」に、どうすれば伝わるのだろう? 160
 

 

 

5章 それぞれがそれぞれの場所で平和をつくる

 

ノブエさんを動かすものはフリーエネルギー? 166


大切なのは、どう生きてどう死ぬか 171


ヒーローに憧れる時代は終わった 173


それぞれの選択を尊重する 176


詩作『みえない津波』 180


子どもの頃の自分を取り戻す 184


「海の見える畑付き島暮らし」の始まり 186


循環を意識すれば、心も暮らしも豊かになる 188


「オカネイラズ尾道」を立ち上げる 189

 

 


 あとがきに代えて 



 

「私たちはもともと一つだった」ことを思い出そう 194
 僕の映画哲学と青柳さんの音楽哲学は響き合っていた 197
 世界を良くしたいと思っている人はたくさんいる 198




 

 


 ◎人物紹介 202


◎スペシャルサンクス 210


◎映画『スーパーローカルヒーロー』クレジット 214


◎映画『スーパーローカルヒーロー』自主上映の案内 221


◎映画『スーパーローカルヒーロー』無料視聴の案内 222